HOME > 小品集『BORDERLINE』

Eyes on the Spring

春はまだ来ない
流れる車窓の景色には
梅の花が咲いていた

君は既に去った後だった

別れには早い季節
空っぽの部屋で一人
僕を見ない
君の真っ直ぐな目を思い出していた
君にかけたかった言葉たちを
飲み込んだまま

いつかはない

けれど
冷たい風が遊びはじめるころ
僕はまた思い出すのだろう
君が残してくれたものを
ひとつずつ

やがて来る春に
君は変わらぬ面影だけを残して
僕の前から去った
春の目